NHKエデュケーショナルのお仕事、紹介します。

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NHKエデュケーショナルを就職先に選んだ理由はなんですか?

実は、私は就職活動を二回しています。大学卒業後、最初に就職したのは児童書の出版社。本が好きで選んだ仕事でしたが、好きがゆえにこだわりを強く持ちすぎ、仕事として続けていく大変さを感じました。体調を崩してしまったこともあり、その会社は1年で辞めて、もう一度就職活動をし直しました。そこで受けたのがNHKエデュケーショナルでした。学生時代に縁あって、この会社で番組制作のアシスタントのアルバイトをしたことがあったのですが、ディレクターの主体性に任せる自由な雰囲気が印象的でした。また、募集していた“コンテンツプロデューサー”という職種の響きに、幅の広い仕事ができそうなイメージを抱きました。一番の決め手は、コンテンツを通して子どもたちの“経験”に関われる会社だということ。今の自分の考え方をたどっていくと、子どもの頃の体験や出会いにひもづいていると感じることが度々あります。そうした貴重な時期に、子どもたちが「何か」と出会うきっかけを作るような仕事ができたら、という思いは、二回の就職活動で共通していた部分かもしれません。
「ディレクターになりたい!」という志望動機でなかったので、入社後の研修で、テレビディレクターの仕事からスタートすると聞いた時には、自分に務まるのかどうか戸惑いました。本当ならもっとディレクターをやるイメージを持って入りますよね(笑)

最初に配属になった「こども幼児部」ではどのような仕事を担当しましたか?

5月に乳幼児向けの番組『いないいないばあっ!』に研修で入り、1~2分の短い台本を自分で書き、6月に初めてスタジオ収録を経験しました。当然、台本の書き方から何から全て分からないので、過去の番組を見たり、先輩に教えてもらったりしながら進めました。ストーリーを考えて台本を書く作業はワクワクしましたが、それを映像として表現するのにはとても苦労しました。その後、夏から『いないいないばあっ!』に正式に配属となり、本格的にディレクター修業が始まりました。テレビ的な世界に慣れるまで3年以上はかかったと思います。収録の度に、分からない用語を書き取ってはそばにいる先輩をつかまえて聞いたり、歌や人形劇、アニメなどさまざまなプロの方々と一緒に仕事をする中で、演出を学んでいきました。2年目には、番組のリニューアルの過程や、『あつまれ!ワンワンわんだーらんど』という新しいステージショー番組の立ち上げを近くで見て勉強したり、『いないいないばあっ!』のDVD商品の制作にも携わったりました。徐々に経験を積んでいき、4年目には目標だった『あつまれ!ワンワンわんだーらんど』のディレクターを担当させてもらい、少し自信がつきました。

その後、異動した部署ではどのようなお仕事を担当しましたか?

4年目の夏に科学健康部に異動になり、『モリゾー・キッコロ森へいこうよ!』という里山の生きものと触れ合うフィールドワークの番組を担当することになりました。私は根っからの文系で、“理科系”に分類されるものすべてを避けて通ってきたようなタイプです。あまり言いたくないのですが、昆虫のあしが6本だということも忘れていたほどで...(苦笑)。一方、周りは、科学分野に強い先輩上司ばかり。この中でやっていけるのか、早く生物に詳しくならなければ、と相当な不安と焦りがありました。
それが解消されたのは、番組の監修の先生に会いに行ったときです。「生物に詳しくなりたいという気持ちや興味も大事だけれど、子どもたちにとって一番大事なのは、自然との触れ合いを通して、生きていくのに必要なこと~たとえば感受性~を育むことではないか」というお話を先生がしてくださり、それなら自分がやってきたことも役に立つのではないかと。むしろ、自分が何も知らないジャンルだからこそ、子どもと同じ視点に立って、何を知りたいと思うかをくみ取り、番組に生かせないかと考えるようになりました。「トンボがトンボたるゆえんは何だろう」とか、「どのような映像で見せたら、そのすごさが伝わるかどうか」など、先生と一緒に話をしながら番組を作っていきました。
次の年には、子ども向けの新しいフィールドワーク番組『みらい!フィールドハンター』の企画を出し、パイロット番組を作らせてもらいました。こども幼児部で学んだ演出や番組の立ち上げ方と、この部署で学んだ、科学的な視点から物事を伝えるノウハウを交えて、一つの番組が作れたのはいい経験でした。また、『ピカイア!』という古代生物をテーマにした教育アニメの制作にも参加させてもらい、ロンドンにロケに行く機会もいただきした。

古代生物アニメ番組『ピカイア!』では初めての海外ロケに挑戦

他に、自身で企画した番組はなんですか?

なりきり!むーにゃん生きもの学園』です。生きものに関心がない子にも興味を持ってもらえるような世界観が持ち込めないか、と考えて企画を出しました。この企画が採用され、パイロット番組を経てレギュラー化となりました。
この番組は、自分が生きものになりきったつもりで世界を見てみようというのがコンセプトです。生態を自ら体験してみることで、より生物の世界を身近に感じてもらえたら、と。私自身、以前は虫が苦手でしたが、生き延びるためあれこれ工夫しているようにも見える虫の生態を知って、興味がわいたという実体験をもとにしています。
もうひとつ意識したのは、二次展開がしやすい番組であるということ。NHKエデュケーショナルの強みは、番組はもちろん、イベントや商品展開など、いろんな出口を設計できるというところです。『なりきり!むーにゃん生きもの学園』がレギュラーになった後、番組と同じ体験ができるワークショップを企画したり、『NHKサイエンススタジアム』というNHKの科学番組が集まるイベントでは、CGキャラクターの『むーにゃん』と子どもたちがリアルタイムでおしゃべりを楽しめるというコンテンツを企画したりしました。こういったイベントは、子どもたちの生の反応が得られるのでとてもおもしろいです。その反応を番組に生かすなどいい循環にもなっています。番組が5年を迎えたところで、集大成的な図鑑も出版できました。
こうして、番組を作るだけではなく、さまざまな展開を企画できるところも、コンテンツプロデューサーという仕事の醍醐(だいご)味の一つだと思います。

番組の内容をもとにして作った書籍
NHKサイエンススタジアムの「なりきりブース」で後輩たちと

『なりきり!むーにゃん生きもの学園』が落ち着いた頃、同じ科学健康部にいた同僚と「もっと熱を感じるような子ども向けの科学番組を作りたいね」という話で盛り上がり、2人で企画を出したのが『バビブベボディ』です。子ども向けに人体の仕組みをひもとく医学番組ですが、新しいチャレンジとして国際展開も見据えています。自分で担当した「赤ちゃん」というテーマの回は、「第24回アジア・テレビ賞」子ども番組部門で最優秀賞を受賞しました。最初に科学健康部に来たときはあんなに科学嫌いだったはずなのに、いつの間にか「サイエンス族」の一員になっていました(笑)。

働き方や休みの使い方について意識していることはなんですか?

休日にイベントやロケが入る時もありますが、その分は代休が取得できます。私は映像の知識がなかったので、新人の頃は特に、休日を勉強の時間に充てることもありましたが、ここ数年は、平日の夜早めに仕事を切り上げて映画を見に行ったり、休日は旅行に出かけるなど、好きなことをする時間をしっかり持てています。

新人の頃は、分からないことを一人で悩みがちで、どうしても業務に時間がかかってしまいます。「今これで悩んでいる」と具体的に早めに先輩上司に相談できるようになれば、時間がもっと有効に使えるようになっていきます。特にここは教育に関係する会社だけあって、人に教えるのが好きな人も多いので、相談すれば必ずアドバイスがもらえるはずです。

大学生に向けてアドバイスを!

この仕事はアウトプットが求められるので、大学時代にできる限りインプットするといいと思います。決して映像に詳しくなれという意味ではなく、社会に興味を持つということ。いろんな大人と話をするとか、古今東西の名作といわれる本や映画にじっくり触れておくとか。一つのことを突き詰めてもいいですし、興味の幅を広げておくのもいいでしょう。そういう時間を十分取れるのが大学生の特権です。私も社会人に成り立ての頃は目の前のことが忙しく、そういう時間が全く取れずに、大学時代の貯蓄でしのいでいる感覚でした。

あともうひとつ、自分への評価を性急に決めつけないことです。就職活動中は頻繁に自己分析をさせられていると思いますが、そこで見えてきたことが全てではありません。自分でも気付いていない得意分野や可能性があるかもしれないのです。自分はこうだからとか、大学生の時に一生が決まると頑(かたく)なになるよりは、未来のことは誰にも分からない、とある程度鷹揚(おうよう)な気持ちでいるのがいいと思います。私はテレビディレクターの仕事をするなんて学生時代には全く想像していませんでしたし、ましてや科学の世界に足を踏み入れるとは夢にも思っていませんでした。出会うはずのなかったものに出会えていることが今すごく楽しいですし、よかったと心から思っています。

芥川 あくたがわ ディレクター
2009年入社
科学健康部

性格:おしゃべり、心配性
好きなこと:読書、計画を立てること
好きな本:『壁』『朗読者』『もしもし下北沢』など
旅行したい場所:ドゥブロヴニク、サン・セバスティアン、マヨルカ島